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2002年2月号 掲載
九州の米どころである福岡、佐賀。日本酒蔵も自社栽培、契約栽培など米からの酒づくりにこだわるところも多い。今回は、そんな蔵をたずねた。
福岡県
  ■「黒田城大手門」醸造元 杜の蔵 (TEL 0942-64-3001)
福岡県三瀦郡三瀦町玉満2773

福岡県の筑後平野にある同社は、用いる原料米は同県・糸島産の「山田錦」と、「山田錦」を改良した地元・三瀦町産の「大地の輝」の2種類のみという、米作りからこだわる蔵元だ。酒造りのない夏場は杜氏の末永利幸さんはじめ酒米づくりに携わる蔵人も多い。末永さんは祖父、父の後を継いで、同社の杜氏になり40数年。3代に渡り一つの蔵の杜氏を務めるケースは非常に珍しく、蔵元との絆の強さが伺える。たとえば、酒販店が自らしぼりたてのお酒を瓶に汲み取る微発泡の『槽汲み』などは、信頼できる杜氏の腕がなければできないものだ。「酒販店の方が遠くから来る日に合わせて仕込んでもらう。杜氏は仕上がりを見事にピタッと合わせてくれます」と代表取締役社長の森永和男さん。
その技が一際光るのが純米吟醸酒『黒田城大手門』。杜氏の人柄を表したような、心地よい香りをたたえた潤いのある逸品だ。季節ごとの限定酒も登場し、2〜3月は『荒走り』。搾った時に最初に出てくるうすく濁ったソフトな新酒は、日本酒初心者の人にも馴染みやすい。
純米吟醸「黒田城大手門」
純米吟醸「黒田城大手門」
720ml/1600円
 

  ■「冨の寿」醸造元 冨安 (TEL 0942-43-6391)
福岡県久留米市山川町326
――特定名称酒を低価格で

福岡県久留米市に蔵を構える同社は、2人の製造責任者を立て、寛政2年の創業以来、ていねいな酒造りを続けている。
「今後、日本酒は、より付加価値をもった特定名称酒と、リーズナブルな普通酒に二極分化するのではないか」と語るのは、同社社長の冨安俊男さん。これは、ワイン業界でのテーブルワインとヴィンテージワインへの二極分化から予測したものだ。昨今、特定名称酒だけを造る蔵元も増えてきているが、だからこそ冨安社長は普通酒にもこだわる。「ウチは、本醸造クラスのものを普通酒として販売しているんですよ」。こうして、普通酒の質を確かなものにしていくのは、日本酒が特別の日だけに飲むのではなく、普段着のお酒として再び定着させていこうとする姿勢の現れだろう。
「飲み手は、最終的には値段よりも舌で判断するんですよ。だから、あまりに価格にこだわり過ぎる蔵は、自分で自分の首を絞めることになるのではないでしょうか」。飲み手の声は、造り手にとって貴重である。飲み手にお酒に対する意見を言ってもらうことが、造り手を育てることになる、だからこそもっと声をあげてほしいと冨安社長は言う。
『冨の寿 しぼりたて吟醸』は季節を感じる味わいとして、地元はじめ全国からの問い合わせも非常に多い。リーズナブルな値段も嬉しい。
冨の寿 しぼりたて吟醸
冨の寿 しぼりたて吟醸
720ml/1000円
 

  若竹屋酒造場 (TEL 09437-2-2175)
福岡県浮羽郡田主丸町田主丸706
――オリジナリティある酒造り

福岡の筑後川中流域で、唯一の蔵元である同社。古文書を紐解いて、昔の酒を復活させるといったユニークな酒造りが印象的だ。
中でも、同社の創業と重なる元禄時代の酒造りを甦らせたのが、『馥郁元禄之酒』。地元である水縄産の原料米をほとんど磨かず(精米歩合85%)、現代の量に比べて格段に少ない仕込み水で仕込んだ日本酒だ。
「原酒が、すでに山吹色なんですよ。ねっとりとした風合いで、非常に濃い味わいです。それを5年寝かせるんですよ」と社長の林田浩暢さん。5年間熟成させると、甘味が落ち着き、味にふくらみが出てくるという。昨今、長期熟成酒がちょっとしたブームだが、この『馥郁元禄之酒』が発売されたのは、昭和47年。当時は地酒専門店でもなかなか売ってもらえなかった。「わざわざ熟成酒ということは表記していないのですが、酒販店、消費者からの反応は2年前ぐらいから随分感じています。リピーターの多いお酒ですね」。
林田社長自身は、オンザロックスで飲むことが多いという。この季節は、ぬる燗でもおすすめだ。
馥郁 元禄之酒
馥郁 元禄之酒
720ml/1600円
 
佐賀県
  ■「東一」醸造元 五町田酒造 (TEL 09546-6-2066)
佐賀県藤津郡塩田町大字五町田
――麹になるまでが勝負

佐賀県の塩田川沿岸に位置する同社は大正11年創業。珍しい焼き杉板づくりの蔵元だ。蔵の真横に広がる田圃で栽培されているのは、山田錦。蔵人による栽培を開始した8年前、佐賀県における山田錦栽培の成功は同社が初めてだった。「当時はなかなか手に入らないお米だったので、自分たちで作ってみようとなって。気候条件など決して適しているわけではなかったのですが、努力の甲斐あって何とか軌道に乗せることができました」と瀬頭一平社長。
自社栽培山田錦のほか、『東一』のポイントとなるのは、麹までの工程だ。自家精米で長時間かけて精米するのはもちろんのこと、精米後の米には毛布が掛けられている。これは、乾いた状態から急に冷やして米の水分量が不均衡になることを防ぐための工夫だ。また米を蒸す甑には、蔵人お手製のH字型のパイプが通されている。パイプに開けられた小さな穴を通して蒸気が上がる仕組みのおかげで、米の蒸し上がりが均一化されるようになった。すべては「できるだけ米に負担がかからないような状態で麹にまでもっていきたい」という方針からだ。
この冬おすすめの『東一 山田錦純米酒』は米の旨みがほどよくにじみ出た、料理に合わせやすい純米酒。ぬる燗でもイケるので、鍋料理などと合わせてみてはいかがだろう。
東一 山田錦純米酒
東一 山田錦純米酒
720ml/1200円
 
 


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