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2004年7月号 掲載

奄 美

黒糖を原料とした焼酎造りが、酒税法で正式に認められるようになったのは、意外と最近のことで、昭和28年、奄美群島の本土復帰の年である。もちろん、お酒造りが国により厳重に管理される以前の米軍政下でも、黒糖による焼酎は造られていたようだが、いずれにしても、国内の流通ルートにのって、黒糖焼酎が売買されるようになったのは、わずか50年前の出来事なのである。現在、黒糖焼酎の製造を許されているのは、奄美諸島のみである。
今回は都会でも大ブームの黒糖焼酎蔵元を訪れた。


朝日 朝日酒造 (TEL 0997-65-1531)
――「朝日」製造元

製造部門の責任者は4代目の喜禎浩之さん。
現在最も力を入れているのは、地元、喜界島で栽培されたサトウキビからできた黒糖を、焼酎の原料として使用することという。喜界島の黒糖は、質が高いことで全国でも有名であるが、コスト面の問題から、焼酎の原料としては使われていなかった。「島の黒糖で焼酎を造りたい」というのは、同蔵のみならず、奄美の蔵元全ての悲願である。これを可能にするために、喜禎さんは、サトウキビ畑の真ん中に自前の製糖工場を造ってしまった。そのバイタリティには頭が下がる。
「島の黒糖で造ることができる焼酎は、まだまだわずかな量ですが、これから少しずつ増やしていき、喜界島ならではの黒糖焼酎を、より多くの人に楽しんでいただきたいですね」と喜禎さんは語る。
朝日
1.8L/アルコール分25%

れんと 奄美大島開運酒造 (フリーダイヤル 0120-52-0167)
――「れんと」製造元

音響熟成。貯蔵タンクに振動式のスピーカーを取り付け、24時間、3か月間音楽を聴かせながら黒糖焼酎を熟成させる。特製スピーカーからタンク内に微妙な振動が伝わり、その振動により焼酎に含まれる水の分子が細かく分解され、よく混ざり合う。その結果、よりまろやかで、スムーズな飲み口が生まれてくる。
「音響熟成をしているものと、していないものを飲み比べてみると、やっぱりしているものの方がやさしい味わいになるようです。普段、あまりお酒を飲まない方でも、抵抗なく飲んでいただけますよ」と語る、製造責任者の小松大介さん。
その他にも、麹と酵母をそれぞれ2種類使い、香りと味わいをバランスよく醸し出すなどといった工夫も、この蔵元ならではであろう。こんなところからも、『れんと』の人気の秘密をかいま見ることが出来る。
れんと
1.8L/アルコール分25%

六調(ブラック) 大島食糧 (TEL 0997-52-0631)
――「六調」製造元

常圧蒸溜器の首のところに、毛布が巻きつけてある。こんな蒸溜器を見るのは、初めてだ。
「あの首のところで、あまり温度を下げすぎないようにしているんです。そのお陰で、うちのお酒ならではの、まろやかで、飲みやすい味わいが生まれるんですよ」と語る、代表取締役常務の武山典正さん。
この蔵元でも、ご多分にもれず、島外からの注文が殺到し、品不足の状態が続いている。これを改善すべく、昨年、貯蔵タンクを新設したが、それでもまだ足りない。現在の品質をより高めつつ、日々増え続ける注文に応えることが出来るよう、杜氏の根釜哲也さんとともに奮闘の日々である。
「他の蔵元の造り手たちと、色々と情報交換をしながら、少しでもおいしい黒糖焼酎を造るように努力しています」と根釜さんは語ってくれた。
六調(ブラック)
720ml/アルコール分40%

くろちゅう喜界島 喜界島酒造 (TEL 0997-65-0251)
――「喜界島」製造元

奄美大島から東に22km。南洋に浮かぶ喜界島は、周囲50km弱の小さな島である。この島に2軒ある黒糖焼酎蔵元の一つが、その名も喜界島酒造。主力銘柄「くろちゅう喜界島」を中心に、長期熟成酒などの商品ラインナップが充実している。
「黒糖焼酎というのは、置けば置くほど熟成が進み、美味しくなります。当社では特に長期熟成酒に力を入れていて、7年熟成の原酒『キャプテン・キッド』などといった商品も人気があります。原酒もそうですが、予想を上回るご注文に、担当者一同、正直、驚いているところなんですよ」と語る、取締役副工場長の体岡英雄さん。
工場内に所狭しと並ぶ樫樽、そして、海岸沿いに高くそびえる貯蔵タンクには、数年後に商品化される黒糖焼酎の原酒が眠っている。
くろちゅう喜界島
1.8L/アルコール分25%

龍宮 富田酒造場  (TEL 0997-52-0043)
――「龍宮」製造元

焼酎の仕込みに使うかめが40本並べられている。黒糖焼酎造りでは、一次仕込み、つまり米麹の発酵にはかめを使うが、二次仕込み、つまり一次醪に黒糖を加える工程ではホーロータンクに移す蔵元が大半だ。当蔵では、昔ながらのやり方で、二次仕込みでもかめを使っているのだ。
「かめ仕込みで造ると、醪の腰が強くなります。黒麹を使うと、物凄いキレのある醪ができます。見てもらえば分かりますが、ウチの醪はおとなしいんですよ」という、専務取締役の富田恭弘さんの言葉に促されて、かめをのぞくと、なるほど表面はほとんど動きがなく、静かに発酵が進んでいる。聞くと、地下水の水脈により土中に埋められたかめが冷やされ、低温で発酵が行われるためという。これも『龍宮』ならでは味わいに影響しているのだろう。
龍宮
1.8L/アルコール分30%

せとのなだ 西平酒造 (TEL 0997-72-0045)
――「瀬戸の灘」製造元

大島海峡の向こうに加計呂麻島を見渡すことが出来る。ここは奄美大島南部の瀬戸内町。この町のただ一つの蔵元が、『瀬戸の灘』醸造元の西平酒造だ。杜氏の松村健郎さんは、奄美でも最古参の造り手の一人で、そのお話は、そのまま黒糖焼酎の歴史である。
「私は最初、泡盛を造っていたんだ。奄美でも、最初は泡盛を造っていたけど、原料が少なくなってしかたなく地元のサトウキビから造った黒糖を使い始めたわけ」。
松村さんが造る黒糖焼酎は、独特のクセがあり、味わいは非常に深い。一度はまると抜けられない、といった類の美味しさなのである。
「最近は口当たりのいい減圧蒸溜の酒が売れているけど、やっぱり焼酎は常圧が一番」という松村さんの言葉も、この味を知ると、俄然説得力が増してくる。
せとのなだ
1.8L/アルコール分18%

長雲 山田酒造 (TEL 0997-62-2109)
――「長雲」製造元

木造平屋建ての小さな蔵の中に、製麹機、仕込み用のかめとタンク、蒸溜器などが並んでいる。昔ながらの黒糖焼酎の味わいを守り続けている『長雲』は、焼酎ファンの間で熱烈な支持を受けている。
「造りの上で特に変わっていることをしているわけではないんですよ。よそと違うところといえば、仕込み水と蔵付き酵母ですかね。龍郷町は、奄美大島でも水のいいところとして知られていて、これは、ウチの蔵の大きな財産です。そして、親父の代からこの蔵に棲み付いている酵母が、焼酎の味わいに影響しているように思いますね」と語る代表取締役の山田隆さん。
もう一つ、黒糖の溶かし方にも独自のノウハウがあるとのことだったが、残念ながらこちらは「企業秘密(笑)」ということで、詳細は教えていただけなかった。
長雲
1.8L/アルコール分30%
 


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