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2006年8月号 掲載

ここ数年、九州の蔵元が造るお酒が、全国各地で大きな人気を博したのは、もちろん、九州のお酒が美味しいからであるのだが、それに加えて、日本人の心の奥底に眠る、故郷に対する憧憬が、これらのお酒に見えるからではないか。大きな山、清く流れる小川、モクモク上がる入道雲。幼い頃、麦わら帽子をかぶり、虫取り網を持ちながら駆け回ったあの風景。遥か数十年前に見た懐かしい風景が、九州のお酒に漂う香りから甦ってくる。お酒というのは、おしなべて造られた土地の風土の香りを有しているものであるが、九州のお酒には、とりわけその香りが強く感じられるのである。
世知辛い世の中に疲れた都会の人々が、しばしの安らぎを求めて、お酒を飲む。そんな時に、九州のお酒は、懐かしい故郷を思い起こさせてくれる。九州出身の人はもちろんだが、それ以外の人々でも、ノスタルジアに浸ることが出来るのは、実に不思議なことだが、これは事実なのである。
なぜ、、九州のお酒は、こんな不思議な魅力を持っているのであろうか。蔵元の人々の話から、その秘密が見えてくるかもしれない。

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熊本県
本格米焼酎白水「華酵母」 メルシャン八代工場 (熊本県八代市) (TEL 0965-32-5121)
――「白水」醸造元

「白水」でおなじみ、メルシャン八代工場を訪れた。東正二工場長は「周辺に大型商業施設ができ、本工場も多くの方から注目を集めています」と語る。
さらに9月、新たに乙類焼酎製造棟「八代不知火蔵」が竣工する。本格焼酎と甲乙混和焼酎向けの原酒の製造に対応し、建設面積は約2000平方メートル、従来の約1.6倍、年間9700klの生産能力を有し、九州でも有数の大工場に生まれる。
「我々、技術者が楽しみにしているのは、新設される生産設備で、ここでは様々な原料や製造方法の試験的な生産も可能になります。熊本の焼酎造りの伝統を踏まえながら、より一層旨い焼酎を造り、同時に新しい焼酎の可能性をここから発信していきたい。さらに、焼酎ファンの方々に来ていただき、麹つくりなども体験できるような設備を整えたいと考えています。新しい焼酎文化を、この八代の地から創造していきたいと思っています」と酒類製造所長の杉山隆一さんは、新工場に期待を寄せる。
本格米焼酎白水「華酵母」
720ml/アルコール分25%
 

特別純米酒「朱盃」 千代の園酒造 (熊本県山鹿市) (TEL 0968-43-2161)
――「千代の園」醸造元

熊本県北部の山鹿市は情緒あふれる温泉街だ。豊前街道沿いに建ち並ぶ昔ながらの佇まいを残した家々、明治時代に建てられた芝居小屋の八千代座、毎年8月15、16日に行われる山鹿灯篭祭りなど、毎年多くの観光客を集める魅力が、この街にはあふれている。
「ウチの日本酒を山鹿市の数ある観光資源の一つとして認知していただければ、と考えているんです。山鹿というのは”本物“が多く残っている街なんです。そうした街の財産に見劣りしない本物の日本酒を造っていかなければと思っています」と、本田雅晴社長は語る。
数あるお酒の中でも、特に純米酒造りに定評があり、また、あらばしりやひやおろし、しぼりたてなど、日本酒ならではの季節感あふれる商品をしっかりと販売している同蔵の造りの姿勢に、山鹿という故郷の佇まいがしっかりと反映されているような気がする。日本酒というのは、本来、こうあるべきなのだろう。
特別純米酒「朱盃」
1.8L/アルコール分14〜15%
 


熊本限定球磨焼酎「待宵」
高橋酒造 (熊本県人吉市) (TEL 0966-24-5155)
――「白岳」「しろ」醸造元

米焼酎「しろ」は、画期的な商品であった。減圧蒸溜によって生まれる、すっきりと飲みやすい焼酎。まさに、食中酒としては、うってつけの味わいだ。
この「しろ」の醸造元、高橋酒造から、待望の新商品が発売されている。「待宵」と命名されたこの新商品は、米麹を原料とした全麹仕込みで造られた一品。米の全麹仕込みというと、沖縄の泡盛を思い浮かべてしまうが、広報部長の久保田一博さんによると、米焼酎ならではのクセのない味と香りに、濃厚芳醇さが深く濃く美しい本格米焼酎に仕上がっているとのこと。
「しろ」を愛飲してきた人には、さらに濃厚で芳醇な米焼酎ならではの味わいを楽しめ、しかも食中酒として、今までにない球磨焼酎の世界を示してくれる新商品だ。
高橋酒造から20年ぶりの新商品となるこの焼酎は、今のところ、熊本限定の商品なので、火の国を訪れた際には、是非とも味わってほしい。
熊本限定球磨焼酎「待宵」
1.8L、720ml/アルコール分28%

本格焼酎「古酒十三年 甲の上」 球磨焼酎 (熊本県人吉市) (TEL 0966-22-6930)
――「球磨焼酎」醸造元

球磨焼酎とは、熊本県南部、球磨地方で造られる米焼酎にのみ与えられた原産地呼称である。
同じ球磨焼酎でも、減圧蒸溜で造る、飲み口のすっきりした、軽やかな風味のものから、昔ながらの常圧蒸溜で造られ、じっくりと貯蔵熟成させた重厚なタイプのものまで、そのバラエティは幅広い。
「今、当社で力を入れているのは、球磨焼酎ならではの付加価値の高い商品です。『米倶楽部』は、減圧蒸溜の焼酎と常圧蒸溜の長期貯蔵酒、さらに樽貯蔵の原酒をブレンドしたもの、『甲の上』は、常圧蒸溜の原酒を13年以上熟成させた逸品です。そして、この秋には地元、球磨地方産のヒノヒカリという原料米を使った新商品を予定しています」と、常務取締役の田渕浩臣さん。
球磨地方28社の造る原酒を集めて「球磨焼酎」としてブレンドし、大都市圏などでこの地の焼酎の名声を高めていったこの蔵元の新しい歴史は、これらの商品にかかっているといってよいだろう。
本格焼酎「古酒十三年 甲の上」
720ml/アルコール分25%
 
鹿児島県
芋焼酎 カブト釜蒸留「がんこ焼酎屋」 大石酒造 (鹿児島県阿久根市) (TEL 0996-72-0385)
――「鶴見」醸造元

多様化が進む焼酎について「銘柄やラベルなどの復刻、仕込み、麹、米などおいて、全体的に伝統的な方向に回帰する動き」を指摘するのは、代表取締役の大石啓元さん。
「需要も、特に県外は伝統的で特徴的なものに移行しています。しかしながら、設備、技術、消毒方法など、昔と今は雲泥の差ですから、品質や味わいを昔と比べるとうんとよくなっているはずです。弊社で伝統的な味わいといえば、創業当時からの銘柄である『鶴見』ですね。県内では、芋の香り豊かな白麹の『鶴見』が黒麹の『莫祢氏』に押される傾向にあったわけですが、県外では『鶴見』タイプの需要が多く、結果、県内でも『鶴見』が伸びて来ています」。
「鶴見」と同様に好調で、製造が需要に追いつかないほどの人気ぶりを見せているのがカブト釜蒸留「がんこ焼酎屋」である。さつま芋、麹米、そして水などの原料、さらに、全ての特徴が最大限残るようにアルコール度数を35度に設定したこだわりの一品である。
芋焼酎 カブト釜蒸留「がんこ焼酎屋」
500ml/アルコール分35%
 

田苑ゴールド 田苑酒造 (鹿児島県薩摩川内市) (TEL 0996-38-0345)
――「田苑」醸造元

企画室の田之上貴弘さんと小牧秀隆さんにお話を伺った。
「今年は『本格焼酎 田苑』が、熊本国税局鑑評会で28年連続、鹿児島県本格焼酎鑑評会で27年連続して“優等賞”を受賞しました。また、『もろみ酢』はモンドセレクション2006に初出品し“金賞”を受賞することが出来ました」。
これは、同社の企業理念“品質にこだわり、付加価値の高い商品を提供する”を日々追及している成果の表れであろう。
また、芸術文化振興に貢献した活動をたたえるメセナアワード2005では「田苑酒蔵サロンコンサートの実施」が地域文化賞を受賞し、同社独自の音楽仕込みと強く結びつける結果になった。
現在、麦焼酎の構成比の高い蔵元であるが、芋焼酎も高い支持を得ている。リニューアルした「田苑ゴールド」は、基幹商品であるが、キャンペーンを8月末まで行い、更なる顧客獲得を目指している。
詳細はHP(http://www.denen-shuzo.co.jp)まで。
田苑ゴールド
720ml/アルコール分25%
 


芋焼酎「小松帯刀」
吹上焼酎 (鹿児島県南さつま市) (TEL 0993-52-2765)
――「小松帯刀」醸造元

鹿児島産のさつまいも、そして国内産の米を原料として、地元の名水で醸し上げる。さらに出来上がった焼酎は約3か月、しっかり寝かせてから出荷する。
鹿児島では、昔から当たり前のように毎年繰り返されてきた、こうした基本的な造りを、今でも忠実に守っている蔵元は、かえって少なくなった。ここ、吹上焼酎は、そんな希少な蔵元のひとつである。
「都会でも芋焼酎を飲む人が随分増えましたが、銘柄の情報ばかりが氾濫して、肝心の美味しい飲み方に関する情報は、まだまだ少ないのが現状です。80度ぐらいのお湯で6対4、もしくは5対5に割って飲むという、鹿児島では定番の飲み方も、まだまだ浸透しているとはいえません。食中酒として相性のいい料理の提案もまだまだ足りない。当社の焼酎は亀ヶ丘の天然水で仕込んでいますが、この水で焼酎を割って飲むと、最高に美味しいんですね。こういう提案をしていっても面白いかもしれませんね」と、営業本部長の森川睦義さんは語る。
芋焼酎「小松帯刀」
1.8L/アルコール分25%

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